2011年10月17日

大王製紙の会長辞任。関連当事者情報に見るスキャンダルの兆候

・出来事

2011年9月、大王製紙の会長が辞任した。
会長が、同社の子会社から巨額の借り入れを行っており、資金の使途も不明。

これが問題視され、引責辞任となった。同社の社長は刑事告訴を検討中とのこと。


・兆候の察知

さて、いち投資家として気になるのは、こういうスキャンダルは事前に察知できなかったのか?ということ

結論からいえば、兆候はすでにあった。あやしむべき情報は6月の時点ですでに公表されていた。具体的には、有価証券報告書における情報開示である。


・どこから分かるのか?

具体的には、大王製紙の、2011年3月期 有価証券報告書をご覧いただきたい。

※こちらから入手できる(第100期の有報)。
http://www.daio-paper.co.jp/ir/library/yuho/


今回の注目ポイントは、注記情報のひとつ、「関連当事者情報」である。

ここに記される情報とは、会社の意志決定に重要な影響力を持つ存在と会社との間の取引。「関連当事者」とは、ここでいう重要な影響力を持つ人々のこと。


このような情報の開示が強制されるようになった主な理由は、株主と関連当事者との間に利害の不一致が存在するため。
株式会社制度には、もとからこういう利害の不一致が伴うものだったが、平成20年4月以降開始の年度から、新たな会計基準のもと、より詳細な情報開示が求められるようになった。


たとえば、会社役員の個人的な利益と、株主の利益は必ずしも一致しない。
そこで、会社に重要な影響力を持つ人々とどのような取引がなされたかという情報を開示対象とすることで、彼らに対する牽制効果が期待できる。

また同時に、この会社はこういう取引をしていますよ、投資するときは、このことをきちんと理解した上でどうぞ、ということでもある。


今回辞任した前会長(当時社長)は、当然、関連当事者に該当する。

具体的にはH23/3期 有報の71ページ「連結財務諸表提出会社の連結子会社と関連当事者との取引」と題された表をご覧いただきたい。

同社の代表取締役社長(当時)に対して「資金の貸付」23億円が実行されたことと、同額が短期貸付金として連結貸借対照表に反映されていることが、見て取れる。


・教訓

前期決算日時点では、社長に対する貸付残高は23億円であった。その後の報道を見るに、4月以降、追加の融資が行われ、9月の貸付残高は55億円に膨らんでいたと聞く。

※四半期報告書においては(残念ながら)、関連当事者情報の開示は強制されないため、4月以降の融資について同社の決算書から読み取ることはできない。


大王製紙の純資産残高は1,296億円。3月末時点でその2%に相当する貸し付けが社長個人に対してなされている(9月時点では4%に相当。一時は80億円に上ったというのだから、会社の規模から考えてもかなりの額である)。

このことを、投資家は把握しておかねばならないということでもある。その情報は開示されているのだから。


経営者の倫理意識は会社の価値すなわち株式価値に直結する。会社の価値とは結局のところ人に帰結するので。


今回取り上げた決算情報は、ある意味、経営者として大胆な情報開示ではある(会社から多額の借り入れがある、などと公言したい経営者はそうそういない)。貴重な事例といえよう。

これを機に、関連当事者情報というひとつの決算情報に、いっそう注目が集まるのではないか。少なくともこのメルマガ読者の方には注目していただきたい、と思っている。


※当記事は 2011.10.17配信のメルマガ「投資家さん、会計の勉強しませんか?」に掲載されたものです。
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posted by SHOJI at 17:52| Comment(0) | 投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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