2014年09月26日

のれんの簿価と企業価値

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英誌The Economist 9/13日号に、のれんについての記事があった。企業の持つブランドの価値が、財務諸表にただしく表現されていない、というもの。「まったく会計士というやからは、見えないものに触れたがらない」という捨て台詞で結ばれている記事である(※こういう書き方、嫌いではない)。

たしかにその通りである。日本企業の財務諸表に現れる「のれん」、欧米企業のフィナンシャル ステートメントに現れるグッドウィル (Goodwill) は同じような意味のもの、企業の超過収益力、ブランドを表す、としばしば説明される。

ちなみに、ソニーの連結貸借対照表(連結B/S)に載っているのれんは6億円('14/6末)、楽天には1,422億円もののれんが計上されている('13/12末)。トヨタの場合、のれんはあるにはあるが、その額は「重要ではありません」というくらい少額とのこと。

会社によっては極めて巨額な資産でもある「のれん」、これが即ちそれぞれの企業が持つブランド価値なのか。

答えはノーである。そういう意味で計上されたものではない。ひとことでいって、その会社が、あるビジネスを買収した際、受け取った時価純資産に対してどれだけ多くの対価を支払ったかを表しているのが「のれん」である。ただそれだけのもの。企業の持つブランドの価値を包括的に表している、などというものではまったくない。

ところで、こういったのれんについてバフェット氏は、買収の際の高値づかみがGoodwillという形でB/Sに現れているケースが多い、そういう意味で、経営者の浪費を象徴している場合も少なくない。そんなものをGoodwillとか呼ぶんじゃない、Badwillとでも呼べ、と吐き捨てるように書いたこともある。

その一方で、(部分的にではあるが)ビジネスの超過収益力を表すのがのれんである、という見方もでき、そういう意味でその価値は時の経過とともに減額するような類のものではなく、のれんの定期償却は実態を表していないと(会計基準が規則的な償却を求めている頃から)主張していたのもバフェット氏。そのせいか、やがて米国会計基準はのれんの定期償却を行うべからず、という風に改正されて今に至っている(IFRS(国際財務報告基準)も同じスタンスに立つ)。

ただいえることは、B/Sにいくらののれんが載っているといったところで、その数字をそのまま受けとめて企業価値を算定するなどできたものではないということだ(ちなみに僕が企業価値を計算する場合、のれんは基本的に全額ゼロ評価に落として考えることにしている。過小評価よりも過大評価の方が怖いので)。

超過収益力、ブランドとしてののれんの価値はB/Sに載っているからといってそれを額面通り受け取ってはいけないのだ。そういう価値は、投資家が自ら算定しなければならない。
会社の価値の評価とはその会社のビジネスの理解から始まる。財務諸表とは評価の結果として受け止めるものではなく、評価を始める際の起点として利用すべきものなのだ。
posted by SHOJI at 16:20| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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