2013年08月14日

会計基準が変われば利益も変わる

電通の第1四半期は前年同期比+15%と売上を伸ばした。にもかかわらず、営業損益は
赤字、純損益も赤字転落となった。

影響が大きかったのは「のれん」の償却費である。英広告大手イージスグループ社を
買収し、その際に生じたのれんの償却費用が業績を圧迫した(売上は増えたのだが
のれんの償却費を吸収しきれなかった)。

電通の6月末における「のれん」の残高は6,202億円。同社はこれを一定の年数(5年
から20年)をかけて償却していくことになる。(*1)

第1四半期の「のれん償却額」が83億円(*2)であることを考えれば、単純計算で毎年
330億円程度の償却コストを負担しなければならない計算になる。日本の会計基準に
則して決算を行っている限り、この負担は免れない。

しかしこの償却コストをあわよくばゼロにしてしまう策がないわけではない。それは
採用する会計基準を変えてしまうこと。

たとえば国際会計基準(IFRS, 国際財務報告基準)を任意で早期適用します、といって
しまえば、のれんの定期償却を避けられる。IFRSがのれんの定期償却を求めていない
(というか禁止している)ためだ。

のれんは超過収益力をあらわす、というのが、のれんの資産計上が認められる理論的根
拠。IFRSの背景にある論理は、のれんは建物のような有形の資産と異なり、時間の経過
とともに劣化していくたぐいのものではない、との認識による。

米国会計基準ものれんの扱いはIFRSと同じ。トヨタやホンダは米国会計基準を採用する
ため、のれんを計上しても定期償却は行っていない。

最近、IFRSを任意で早期適用するという会社を眺めてみると、のれんの残高の大きい
会社が目立つ。楽天然り、武田薬品工業然り。(*3)

採用する会計基準が異なれば、損益そのものも大きく変わるという事実。私たち投資家
は、会計基準の差異を越えて、その向こうにある会社の実態、ビジネスの本質を見据え、
価値を見極めた上で、投資の意思決定を行わねばならない。さもないと多額の授業料を
支払うことにもなりかねない。

投資の成否を分けるものとは、理解の深さに尽きる。会計ルールを含めて、会社そのも
のの理解に努めることで、私たちは妥当なリスクを背負い、正当なリターンを手に入れ
ることができるようになる。

(*1) 有価証券報告書(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)より。
(*2) 四半期報告書(連結損益計算書)より。
(*3) 楽天は2013年12月期1QからIFRSを適用。武田薬品は2014年3月期末から(予定)。

【まとめ】
・適用する会計基準が異なれば、利益も大きく変わり得る。利益が増えたからといって、
その理由がわかるまでは油断してはならない。
・いかに決算の数字が不確かなものか。これが、利益は絶対的な事実ではなく、経営者
のひとつの意見に過ぎない、といわれるゆえんである。
・利益の数値にとらわれることなく、会社そのもの、ビジネスの理解に注力する(その
ために会計面の理解も深める)べきこと。その結果として、投資家は、合理的な判断、
行動を通じて、適正なリターンを手に入れることができるようになる。
・投資家個人の理解の深さが投資の成否を決める。

以上。■


□オーディオブック プレゼントのお知らせ
ご希望の方へプレゼントする予定のオーディオブックを製作中です。

タイトルは、(「会社分析の方法」改め)
「投資家のための決算書の読み方ガイドライン」(近日中に完成の見込みです)。

※お申し込みはこちらからどうぞ。
http://bit.ly/14WuKTb

ご紹介いただくレポートはこちらになります。自己申告制です。
なお、このメールをこのままご友人の方へ転送いただいてもOKです。
http://www.1toushi.com/repo/Nikki_JGC_Repo1307.pdf
※PDFファイル。■
posted by SHOJI at 21:10| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月17日

日本企業のPERが高い理由

日本株は概してPER(株価収益率)が高い。歴史的に見ても一貫して高い。

現在、日本(日経平均採用銘柄)の予想PERは16.3倍、アメリカは15.2倍、ドイツは11.3倍、中国は8.8倍だそうだ(7/17 日経朝刊)。やはり高い。

なぜ日本のPERが高いのか?

思うに、持ち合い株式が大きな要因になっているのではないか。
株式の持ち合いは日本に特徴的なものであり、他国ではそう見られるものではない(ドイツにもあるが縮小傾向)。

特定の相手に出資し、同じ相手から出資を受け入れる、ということは、両社がともに資産と資本を膨張させるのみである。そこに経済活動としてポジティブな意義は見出しにくい。

その上、他の株主の議決権を希薄化させるという、後ろ向きの効果が副作用として生じる。もっともこの「副作用」を主な目的として株式持ち合い体制は構築されてきたわけだけれども。

経済実態のない株式持ち合いという行為によって、両社の発行する株式数(発行済株式総数)は水増しされてきたといえる。一株当たり当期純利益の額は、計算上、その分母が膨らむのだから小さなものとなる。

一株当たり当期純利益が過少に計算されれば、これを分母とするPERの数値は高くなる。

株式持ち合いの不健全性は、常に指摘されてきた事柄であって、株式持ち合いの状況を有価証券報告書上でも(わかりやすいとはいいがたいけれども)開示することを求めるようになってきたあたり、金融庁も株式持ち合いの縮小(ゆくゆくは解消)を意図しているのだろうと推測する。

日本においても、株式持ち合いが縮小していくにつれ、PERは低下していくことだろうと予測する。

健全な意思決定を重ねる会社は長い目で見て強く、不健全な意思決定を重ねる会社は弱体化するのが自然の流れである。僕自身、株式持ち合いが極端な会社に投資したいとは思わない。
posted by SHOJI at 16:09| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月24日

有報の季節

そろそろ、2013年3月期の有価証券報告書(有報)が出そろう時期である。
早い会社は既に提出済みである。有報はEDINETで見ることができる。

決算短信も良い情報源なのだが、有報はそれに勝る、というか情報の量と質の面で、他を圧倒する決算書である。
決算短信はその名のとおり、決算に関する「短い手紙」であるからして、開示される情報はかなり簡略化されたものとなる。
有報は会社にとって、会社情報開示の本番ともいえる決算書である。何より作成に要する労力が格段に異なる。

なのに、世の多くの人々(投資家含む)は、決算短信を読んで満足してしまうのが常である。もったいない。

投資の成否を決めるものとは投資対象たる会社の理解の深さであろう。
翌期の業績予想に一喜一憂するよりは、目の前の、そして足元の事実の把握と理解に努めた方が良い(と強く思う)。

株主総会に先んじて有報を開示している会社もそれなりにある。
決算短信や総会招集通知に添付される計算書類だけでなく、有報に目を通して、総会に出席するのはかなり有意義であろう。その上で、経営者本人に質問するなりしていただきたい。それでこそ、有報を作成する側も、またそれを監査する側の私たちも、その労力が報われるというものだ(経営サイドにとっては大きなプレッシャーとなるだろうけれども。しかしそれでこそ、経営を委託する側と委託される側との間に、健全な緊張感の伴う関係が成り立つはずだ)。
posted by SHOJI at 17:53| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月20日

決算書が難解な理由

決算短信や有価証券報告書は、投資家にとって貴重な情報源である。
しかしそれを初めて手にしたとき、その難解さにめまいを覚えた。
会計を本職として二十年近く生きてきた今でも、油断すると誤った解釈をして痛い目をみることがある。

ひと昔前、ウォーレン バフェット氏は、決算書を読みやすくする運動なるものを展開していたと聞く。が、今も継続中かというとその気配はない。

決算書が難解なのはなぜなのか。
長期にわたって状況に変化がないのは何らかの理由があるためだ、と考えるのは自然である。

企業情報を開示する側(会社)の、決算書を読みやすくする努力が不足しているのかもしれない。
決算書を利用する側(投資家)の、読み解くための努力が足りないからかもしれない。
企業情報を開示する側にとって、開示を強制される情報を曖昧にしておく方が都合が良い(丁寧に読み解けば分かるはずだがそこまで努力する人は少ない)からなのかもしれない。

情報の非対称性が存在する。知り得る者と知り得ない者との間に情報量の差が生じることで、意思決定の質が変わり、結果として富の移転が起こる。

もしかしたら、決算書を読みにくいものとすることで得している人物がいるのかもしれない(陰謀説)。
決算書を読み解ける者にとっては、有利な立場に立てる現状が望ましい。たいてい一番得する者が黒幕である。犯人はそいつだ。

そうか僕か。
posted by SHOJI at 10:55| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月02日

「新・有報セミナー(仮題)」予告

決算書(有価証券報告書、決算短信)の読み方をお教えします。

決算書を正しく読み解くことで、投資対象たる会社の理解が深まります。

理解が深まれば深まるほど、投資家としての意思決定が精緻さを増します。

投資の成否は意思決定の質によって決まるものです。

正しい知識とそれを活かす技術を持つ者が、長期的に正当なリターンを得て、複利の力の後押しを受けて、加速度的に富を蓄積していけるのです。

そのための知識を、お伝えします。
posted by SHOJI at 15:01| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月16日

会社四季報を熟読

会社四季報をいつになく熟読している。で、興味を覚えた会社をかたはしから調べている(有価証券報告書や決算短信を用いて、である)。

いくらくらいなら妥当か、という視点で眺めてみると、まともな業績を上げている会社を今、市場はどのていどの割引率で評価しているのか、全体としての均衡点のようなものがうっすらと見えてくるようで興味深い。

去年の11月半ば、野田前首相の解散宣言から株価は急速に上げてきているのだが、すでにバブリーな水準の会社もある。今買ってはいけない。

しかしその一方で、まだそんなに高くない、むしろ今のうちに買っておきたい、という会社も少なくないことが認識できて、これまた興味深い。
DollarInPuzzle.jpg
posted by SHOJI at 12:41| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月25日

会社分析をリクエストできるようになりました

会社分析リクエストフォームを、楽しい投資研究所HPに設置しました。

以前も設けていたのですが、休止していました。受け付け再開です。

bullhitchart.jpg

あの会社を分析してほしい!という方は、こちらからご投票いただけます。
http://www.1toushi.com/vote/

重複投票はできないようになっております。ひとり一票でございます。
(庄司)
posted by SHOJI at 13:55| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月14日

財務諸表とその裏に隠されたストーリー

嬉しいメッセージをいただいた。ご紹介させていただく。

---
「USEN決算発表」のキーワードで検索して、主催者様のブログ(※楽しい投資ばへっとブログ)にたどり着きました。

それを読んでとても面白く感じて・・・財務諸表(その裏に隠されたストーリー)を読み解けるようになったら小説よりもかなり面白いのではないか???と思いました。

他の方からも要望があがっていましたが、私も財務諸表の読み解き方を指南した本を書いていただきたいです。
(さくらさん 大阪府 五〇代 女性)
---


財務諸表とその裏に隠されたストーリー、まさに今、私が書こうとしているものです。

いずれ本にして世に出したいと思っているテーマそのものをズバリ、メッセージとしていただけて、とても嬉しい。

そうなんです。財務諸表を読み解くこととは、今を生きる企業のストーリーを、生々しく、ありのままに読み解くことそそのものなんです。これが面白くないはずありません(あなたのいうとおり!)。

これからはメールマガジンでも一層、「ストーリーで読み解く財務諸表」というテーマを意識して、書いていきたいと思いました。
嬉しいメッセージをありがとうございました。(庄司)

posted by SHOJI at 22:35| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月04日

これまでの本では触れられていない Buffett の投資の秘密

拙著「バフェットの謎」読者さんからご感想をいただいた。嬉しい内容である。
こういうお便りは著者として本当に励みになるのです。ご紹介させていただく。

---
読者の方より:

英書和書ふくめてBuffett関係の本はほとんどよんでいます。
庄司さんの本は、簡潔かつBuffettの投資の秘密(フロート、利益の見方など)について列挙されているところがよいと思います。
これまでの本では、断片的にしか触れられていないか、もしくは全く触れられていないからです。
今後のご活躍を祈念いたします。
(O.T さん 東京都在住 30代 男性)
---

著者より:
ご期待に応えられるような活動をしていきたいと思っております。がんばりますよ。(庄司)
posted by SHOJI at 19:25| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月30日

決算書はスタート地点にすぎない

「バフェットの謎」読者さんからレビュー・コメントをいただいた。
ありがとうございます。(許可を得て)ご紹介させていただく

---
バフェットは、優良企業の株を割安な値段で買ったから成功したと漠然と言われているが、
それは本当か?本当だとして、「優良企業とは何か?」「割安とは何を基準に決めるのか?」についてバフェットが何を考えていたのか?
に迫る好著。(少なくとも大変面白い)
著者は、公認会計士ならではの専門性も武器にしつつ幅広い視点で上記疑問を紐解いていく。
決算書は企業を理解するためのスタート地点(に過ぎない)という下りが興味をそそる。
(N.S さん 千葉県 50代 男性)
---

執筆に当たって気を配ったのは、すでに類書で取り上げられていることは極力省こうということでした。同じことをくり返しなぞってもあまり意味はないですし。

そこで特色を出したかったのが会計に関する分野です。

バフェットの思考に迫るには、一番大切な部分であるにもかかわらず、この部分(会計に言及したバフェットのことば)を取り上げた書物は皆無に近い。
なので気合を入れました。分かりやすくとは意識しましたが、担当さんの理解も得られ、容赦なく書きました。会計に接する機会の少ない方には少々読みやすさに難が残るかもしれません。

自分でいうのもなんですが、現段階において、バフェット氏の会計的思考に迫る本としてはおそらく世界的にもユニークなものと位置づけられるはず、と思っています。

まだの方は是非ご一読あれ。

バフェットの謎
http://amzn.to/aQN8Gz
posted by SHOJI at 17:35| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月24日

会社分析(トヨタ、ホンダ、信越、三菱重工、シャープ)いたしました件

こんにちは。庄司です。

ここ10年間で最も多忙な春を過ごしております今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

さて、すでに店頭に出ております今月号の日経マネー(7月号)にて、上場企業5社の分析を行っております。

それぞれ小さな200〜300字程度の分析記事ですが、各社の決算短信その他の情報を丹念に読み込んで、コメントしております。

編集部より依頼を受けまして、僕が分析したのは次の5社であります。


・トヨタ自動車 ← (ひとこと)数字はとんでもない大赤字のくせに強気の雰囲気を漂わせる経理部長が不気味

・本田技研(ホンダ) ← (ひとこと)思った以上に北米依存度高し

・信越化学工業 ← (ひとこと)おおぅ・・・

・三菱重工業 ← (ひとこと)日本の工業を支える尊敬すべき重厚長大企業、されどキャッシュが残りにくい体質なんですな

・シャープ ← (ひとこと)液晶、差別化なくして成長なし


同時に日経マネーの副編集長さんから、これらの会社について、「回復期待度」なるものの判定も依頼されました。

なので、僕なりの視点で上記の各社、誌上にてAからEの判定を記しております。

(それぞれの意味はこんな感じです)
A…膿みを出し切り、増益も視野に
B…着実に回復軌道に乗れそう
C…景気回復なら業績も好転へ
D…追加リストラの可能性
E…リストラ不十分、回復遠い
(設定 By 日経マネー編集部)

良い会社はこの環境下でも強さを示しているし、悪い会社はとことん悪い、というのが印象です。こりゃ淘汰が進みますわ。

僕自身は、強い会社の見極めに注力し、長期の視点で投資し続ける所存であります。

こういう時こそ、投資は楽しく行っていきたいものですね!

※日経マネーはいまどきアマゾンでも取り扱っているもようです。こちらからどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00287ZC9C/katteshohyo-22

買っても買わなくても、読んでくださったみなさん、どうもありがとう、ありがとう。(庄司)
posted by SHOJI at 18:27| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月11日

決算短信で会社分析 の話

日経マネー副編集長さんのご依頼で、3月決算上場企業の決算書分析をいくつか行った。

分析のために、決算短信と会社四季報とを合わせて読んだのだが・・・

思ったことは次の通り。

・会社四季報はコンパクトでいいのだが、これを読んだだけで投資先を決めてはだめだ(情報が絶対的に不足する)。

・決算短信は興味深い情報が満載だ。しっかり読みこめば、かなり深いところまで会社の実情に迫れるのではなかろうか。

・これまで自分は決算短信をなめてかかっていたところがあるかもしれない。
→ 反省した。

会社分析の結果は、今月20日頃発売予定の日経マネー(7月号)に掲載の予定であります。
posted by SHOJI at 21:41| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月16日

時価会計凍結論議再燃(アメリカ)

・「米、時価会計見直し巡り応酬続く」(日経新聞)


不透明な決算開示は信用を失わせる。

信用できないものに投資する投資家はいない。

米議会のある議員が主張するのは、

「まじめに働いてきた商店主らが貸し渋りに苦しんでいる。時価会計の即時凍結が必要だ」
「これは不況に苦しむ家計の問題だ。アカデミックな議論は不要。すぐに時価会計をなんとかしろ」

ただ、アメリカ政府やFRBが凍結に反対(あるいは慎重)姿勢なのが救い。

(結論)
・時価会計を凍結すれば問題は解決する、とか考える政治家を選んではダメなのです。

---
(参考)
米、時価会計見直し巡り応酬続く
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090313AT2M1300Q13032009.html
posted by SHOJI at 13:11| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月22日

いま有楽町

※近況報告

傘を忘れた。

仕事は終わったが、外は冷たい雨。

エスプレッソを飲みながら雨宿り中。
posted by SHOJI at 19:50| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

日本の時価会計緩和。基準改悪の葛藤

半月遅れのニュース。欧米に追随して、日本でも時価会計の緩和が決まった。

12/5 企業会計基準委員会 (ASBJ) は「債権の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」を公表。

これは国際会計基準審議会 (IASB) が「金融資産の保有目的区分の変更」処理を認めた基準改正(というか改悪)を日本でも容認したもの。


たとえば、こういうことが起こりうる。


(事実)債券の時価が著しく下落した。

(原則)本当は強制評価減(損失処理)しなきゃ。

(会社のいいわけ)「いや実は、この債券は償還されるまで持ち続けるつもりだったんだ(そういうことにしたんだ)」

(会社の処理)「だから強制評価減(損失処理)はしなくていいよね」

(監査人)「・・・(基準がそう変わったのだから、何もいえません)」

→ 損失処理は回避。結果として、投資家をあざむくことになる。


適用時期は、2008/12/5 から 2010/3/31 まで。(時限付き)

ただし一定の条件を満たす場合には 10/1 までさかのぼって適用することも可。


この取扱いは、基準委員会の14名中12人の賛成で可決された。

おもしろいのは(おもしろくもないが)、2名の委員が審議のあいだ一貫して反対姿勢を示したこと。

審議中に出たという反対意見を、以下に記す。

---
「局面に応じて変わるようであれば、基準としての役割を果たさなくなる」

「このような基準変更は、会計基準設定主体への信頼性を著しく損なうおそれがある」
(万代勝信・一橋大学大学院教授)

---
「公表日より前に行われた意思決定にも適用すると定めることは、事実関係と必ずしも合致しない適用日を選択できるとの誤解を生じさせうる」

「経営者のモラルハザードを助長する懸念がある」
(小宮山賢・日本公認会計士協会副会長)
---

まったくもってその通り。僕個人は反対意見に全面同意である。

信頼なくして健全な成長などありえない。

今回の出来事は、近い将来、反面教師として学ぶべきことがらとなるのだろう。


(蛇足のこと)
審議の中で反対票を投じた小宮山氏は、僕が以前勤めていた監査法人で、現場監督(インチャージという)をしていたとき、ボスだった人物。

一緒に仕事する際、こちらは緊張しまくりだったが、今にして思えば好ましいボスだった。

氏の印象は、「物静かで穏やか、内面から発する熱気」といったもの。

このところ、ご無沙汰してしまっているが、このような人物と、いっときなりとも共に仕事できたことに、なにやら誇らしいものを感じたりもするのである。
posted by SHOJI at 19:47| Comment(2) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月08日

海外子会社からの配当非課税が企業業績に与える影響 の話

日本企業が、海外子会社から受け取る配当金について、非課税とする方針だと伝えられた(12/5 自民税調)。

現行の税制では、日本の親会社が、税率の低い海外から配当金を受け取る場合、本国・日本の税率との差額分が追加徴収される。

日本の場合、税金は全世界の所得に対して課されるからだ(全世界所得課税)。


しかしそれでは、企業が海外で稼いだキャッシュを本国に配当すべきでないということになる。

政府としては日本国内の雇用を増やしたい。そういったところから、今回の税制改正案は出てきたのだろう(と推測)。


さて会計的には、海外子会社から受け取る配当について、将来、課されるであろう税金分は税金費用として計上される(計上されなければならぬ)(海外子会社の留保利益税効果)。

将来納付しなければならないであろう税金分は、繰延税金負債としてすでに債務認識されているということ。


ところで今回の税制改正案により、海外子会社からの配当が非課税となった場合どうなるか?

すでに認識されている債務が不要になる。つまり

債務の消滅 → 税金費用の減少 → 利益の増加

という流れ。

結果として、企業業績アップの要因となる。

さらに副次的な効果としては、より安い税率の国・マーケットを求めて、日本企業の海外進出も進むことだろう。

日本企業の自由度は増す。自由度の増加は概して、より大きな成果をもたらす。
posted by SHOJI at 08:53| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月01日

景気指標はおもしろい という話

日経新聞・月曜朝刊に掲載される「景気指標」がおもしろい。

前FRB議長グリーンスパン氏の著書「波乱の時代」を読んでから興味を持つようになった。金融政策の中心人物だった彼は、指標を読み解くことでアメリカ経済の実態を把握しようとしていたっぽい。

たとえば今日の朝刊 (p19) から、僕の興味を引いた点をいくつか。
・製品在庫指数:この半年で1割上昇(急上昇) → 製品在庫積み上げ → 投げ売り可能性高まる → (結論)物価下落サイン

・新車販売台数(10月):37.9万台 → 05年・06年・07年の月平均販売台数はそれぞれ、48・48・44(万台) → 3年前に比べて2割超下落 →
そりゃ在庫も積み上がろう → (結論)関連業種巻き込んでの業績低迷サイン・やはり物価下落サイン

・M3増加率(マネー供給量増減):前年比 0.6%(10月) → 目立った伸びではない →
むしろ日銀の市中流通通貨を吸収しようとする懸命な努力が見て取れる → うちの中央銀行のインフレ警戒度は高いと推測 →
(結論)急激な物価上昇の可能性低い(日銀がんばれ)

・アメリカ10年国債(財務省証券)利回り(11月):2.92% → 2年前は4.70% → 株価の急落から国債の選好度強まる →
これに対して日本10年物国債利回りは1.36% → 2年前は1.65% → 同じく株価は下落しているのだがアメリカほど顕著な下げは見られない →
日本国債の主な買い手は日本人 → (結論)日本人は以外に冷静


最後に、僕個人の投資姿勢:
日本株?買っています。
posted by SHOJI at 09:16| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月17日

「時価会計の一部凍結」構想にもの思う

金融機関の破たんを避ける(金融システムを保護する)目的で、欧米と日本が歩調を合わせて時価会計の適用基準をゆるめようとしている。

日本も欧米も、過去の経験から学んでいないのか?!

などと、今朝はひとり憤った。

が、ふと思った。

各国の政府が、過去から学んでいないからではなく、学んだ結果として、時価会計の緩和を決めたのだとしたら?

・大多数の投資家は、企業の厳密な情報開示など望んでいない(開示された詳細情報など読む気もない)

・大多数の投資家にとって重要なのは、その場その場の雰囲気である

・利益の計算過程などどうでもいい、要は、結果としての純利益がいくらか、前期に比べてどの程度増加したか、それだけが問題だ

・企業情報を赤裸々に公開したところで、純利益が急減するもしくは大赤字が出る。それでは大多数の投資家は持ち株を投げ売りし、株価は急減するだけだ

・財務の透明性は損なわれても、開示される情報がぼやけた方が、むしろ大多数の投資家にとっては好ましい(株を買おうという気にもなる)

そういえば古代ローマのカエサルはこんなことをいったと聞く。

・「そもそも大衆とは、必ずしも真実を見ることを欲しない。むしろ真実に背を向けてでも、自分が見たいと思ったものだけを見る」

麻生首相も中川財務・金融担当相も、ブラウン英首相もサルコジ仏大統領もブッシュ米大統領も、そう判断したのではないか。

だとしたら、今回の、会計の信頼性を著しく後退させる方針にも納得がいく。(愚策であるのは間違いないところではあるけれど)

※ならば僕は、これまで以上に決算書を読みこんで読み込んで、長期投資に徹しよう。
posted by SHOJI at 20:15| Comment(4) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「時価会計一部凍結」何も学んでいないのか日本 の話

今朝の日経新聞一面の大見出し「時価会計一部凍結へ」

<「時価会計一部凍結」構想のポイント>

・現在の金融商品会計基準は価値が著しく下落した金融商品は原則、評価減を強制(減損処理)

・値下がり著しい株式などは「減損」損失処理が必要となる

ところが

・これに不服の銀行業界

・地方銀行協会トップは、財務・金融担当相へ時価会計凍結の陳情

・これを受けて中川金融担当相は「時価会計一部凍結」の検討を指示

・銀行が保有する、値下がり著しい金融商品の時価評価を強制しない方向


<今後起こり得る可能性の高い出来事>

・銀行は著しく価値の低下した金融商品(多くがサブプライム関連のものだろう)を時価評価せず(資産の過大評価)

・投資家も、取引相手も、銀行の財務の健全性を疑問視(銀行の株価下落)

・住宅バブルに踊った銀行経営者の経営責任はうやむやに → 銀行の財務の健全化インセンティブ低下 → 自浄作用はたらかず

続く流れは、信用収縮・投資家の委縮 → 景気低迷の長期化 → 株価は上がるはずもない

なんという悲観的なシナリオ。ちょっと前、懸念していた出来事が、がぜん現実味を帯びてきた。

アメリカもヨーロッパの規制当局も、日本の「失われた10年」から何を学んだというのか、なんてことを以前に書いたが、なんのことはない、当の日本自身が学んでいないのだ。


※今朝はあまりのショックに、地下鉄乗換駅を2度も乗り過ごす始末。
posted by SHOJI at 20:13| Comment(0) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月11日

投資家は甘やかされない / 株価急落に弱い会社を事前に見抜く法 の話

恐慌といっていいような昨今の株価急落の中、思うのは、株価の上げ下げに経営基盤を大きく左右されないような会社が投資対象としては好ましいということ。

要注意なのは、株主から預かったお金(資本金)を他社の株式取得にあてているような会社。

投資事業を本業としている会社ならいざ知らず、新興のベンチャー企業が株式を公開して、新株発行によって得た多額のキャッシュの使い道に困惑し、他社の株式を大量に取得しているというのも日本企業ではめずらしくなかったりする。

株主はあなたが経営する会社にこそ投資しているのに、そのお金をスルーして他社の株式に投資するとはいったい何を考えているのか?

なんてことをたまに苦々しく思ったりもするけれど、そういう会社に投資した株主もそういうことは当然、知っておかねばならない。

経営者も経営者なら、株主も株主といわざるをえない。

他社の株式を大量に保有している会社の場合、その結果として、B/S(バランスシート、貸借対照表)には多額の「投資有価証券」が記載される(資産の部)。

そして、含み損を抱えているか、それとも含み益なのかは「その他有価証券評価差額金」として情報開示がなされている(純資産の部)。

投資家はこういう情報を理解しておけよ!という趣旨で、法律は上場企業に、こういった財務情報の開示を強制している(金融商品取引法)。

逆にいえば、きちんとそういう情報は開示しているのだから、知らなかったなんて言い訳は通用しないんだぞ、と暗に投資家は警告されているようなものだ。

昨今の株価急落を機に、多くの投資家がこういった情報の大切さを再認識することになるのではないか。

だとしたら、長い目で見て、これもまた良い機会といえるのかもしれない。
posted by SHOJI at 08:23| Comment(2) | 会計と投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。